今回のコラム、約1年半ぶりの再開です。本当に永らくのご無沙汰でした。そもそもなぜこのコラムを長期にわたってお休みしたのか?
「他の仕事にかまけていた」あるいは「コラムからビジネスが発生することがなかった」など不埒な部分も確かにありました。
が、真相は「コラム、メルマガ見てましたよ!最近発行されてませんね」という声を聞く機会が何度もあったからです。やはり、読者の声こそがエネルギーというのを改めて感じております。
さて、新生コラムの第一弾は、似て非なるもの「デザイン」と「アート」について考えます。
「デザインとアート?自分には関係ないや!」
と思われる方があるかもしれませんが、他の職業職種にも関連する部分が多いのでぜひ最後までお付き合いください。
私自身、40年以上デザインの仕事に関わってきて漠然としか捉えていなかった「デザイン」と「アート」、重なっている部分もかなり多いのですが、この二つは様々な職業、立場においても活かせると考えています。
似て非なる二つの言葉ですが、デザインは主に
を役割とし、アートは
“自己表現・感情の伝達・社会的メッセージ”
を主な目的としています。顧客に寄り添って顧客の思いを実現するのがデザインで、自らの内なる思いやエネルギーを世に問うのがアートと言えるでしょう。
アーティストは、世の中の「問題や課題を自分独自の視点で発見」し、世の中に問いかけます。そう考えれば自らの「わがまま」を発信しているとも言えます。ですから、その価値観に共鳴してもらわない限りいつまでも日の目を見ません。
一方、デザイナーはクライアントから提示された課題を機能性、実用性、美しさの表現というデザインを通して解決していく役割ですから、その問題が解決しないことにはその仕事の継続が危うくなってしまいます。(次の発注がありません。)
しかし、これは完全に色分けされているのではなく、それぞれの要素が重なり合う部分も多いです。「デザイナー」は、「問題解決能力」が本分で写真やイラストなどの視覚的センスは補完的なものと言えそうですが、色使いやレイアウト、言葉の巧みさなど美的センスが人々の心を揺さぶり、「アート」的価値観をも含んでいるとも言えます。
では、今回なぜ私がデザインとアートの違いをテーマとして取り上げたのか?その理由は
人間、時と場所、周囲の環境によってデザイン的観点とアート的観点の両方を兼備しておく必要があるからです。自社、あるいは経営者自身が世の中に対して訴えたいテーマがあるはずですし、顧客から湧き出たニーズに対して問題解決を図らなければならない局面もきっとあるはずです。要は常に
を持ち合わせている必要があるということです。
次にデザインとアートの価格設定です。デザインはグラフィックの場合、「ページ当たりいくら」というおおまかな相場が存在しています。さらに、プロジェクトの規模や顧客との交渉を経て価格が決まっていきます。
一方、アートは「時価」あるいは表現者が希望した価格になります。有名な画家の作品一つが「ン億円」という評価が得られることもあれば、二束三文にもなりかねない…。要は作品の独自性や芸術家の背景、知名度などに大きく左右されます。よく「絵で飯が食えるか!」という指摘も当たらずとも遠からずなのです。
このデザインとアートですが、私が主力としている漫画の世界でも色分けされます。漫画には商業漫画と広告漫画(ビジネス漫画)があり、その特性は随分異なります。
週刊や月刊で発売される漫画雑誌や単行本は「商業漫画」で自分の個性を打ち出しているので「アート」的でありその売れた数で収入が大きく変わります。漫画家は読者が増えるよう、支持されるように面白い漫画を提供しなければなりません。
一方、広告漫画はクライアントの求めに応じ課題解決につながる漫画を作成しなければならない、つまり、「デザイン」の世界に近いものがあります。
では、今回はアートとデザインの中からデザインを通じてイメージアップを勝ち取った事例をご紹介します。題材はスターバックスの「リユーザブルカップ」です。
世界的な環境保護の機運が高まっている現代、スターバックスは「リユーザブルカップ」を導入しました。普通の紙コップにそっくりなプラスチック製で、白地に緑のキャラ(イラスト)が描かれているシンプルだけどオシャレなデザインです。軽いし洗って何度も使えるから環境にもやさしいと評判になっています。
つまり、スタバの課題は「環境にやさしい企業」というイメージをどうやって実現していくかということでした。その一つの手段としてこのカップは登場したのです。また、このカップには国外の異なるデザインのものがあるとのことでこれを入手しているファンもいるほどです。また、このカップを持参すると割引きの特典もあるとか…(現在も継続中かどうかは不明ですが…)
このようにカップひとつで企業イメージを高められる、その一端を担っているのが「デザイン」です。また、デザインは何もグラフィックや意匠デザインに限ったものではなく「ライフデザイン」というジャンルもあるように、スタバの取り組み自体もその範ちゅうに入るのかもしれません。
いかがでしたか?デザインとアート。どちらの視点で捉えたとしても人のココロを揺り動かす力がこの二つにはあるのです。ぜひ皆さんもチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
デザイン、アートに興味を持たれた方はいつでもお問い合わせください。