今回のコラムは「“物語力”を活かして企業のイメージアップを図る」について考えます。人間はとかく物語・ストーリーが好きです。何十年経とうが何百年経とうが映画やテレビドラマが廃れることはありません。なぜ、ドラマはそのように人を惹き付けてやまないのでしょう。
これまで皆さんはどれほどの種類のドラマや映画をごらんになりましたか?さほど映画館に通っていない私でも数え切れないほどドラマを見ています。それほどドラマは私たちの心をつかんで離しません。
実は、ドラマの一本一本はすべて異なる作品ですが、基本のカタチはほぼ同じです。同じような場所、同じような設定、同じような登場人物、同じような展開なのに夢中になってしまう…。笑う、怒る、悲しむという場面はだいたい同じです。
年配者の方におなじみのロングセラーのドラマであった「水戸黄門」もストーリーは毎回同じだとわかっていながらやっぱり見てしまった…という経験をされた方も多いでしょう。なぜ、そうなるのか?これにはキチンとした「型」があるからです。
皆さんよくご存じの言葉ですね。(ですが、不思議なもので言葉としては知っていてもいざ話す段階になるとその通りには行かないのが常ですが。)人間の感情が動く仕組みは結局同じです。この仕組みが人を惹き付けてやまないのです。「桃太郎」を題材に考えてみましょう。
起…ものごとの始まり(川で拾った桃から桃太郎が生まれた)
承…事件や障害の発生(鬼ヶ島で鬼が暴れて困っているという事実)
転…敵との闘い(キジや猿を従えて戦いを挑み勝利する)
結…ハッピーエンドに暮らす(財宝を持ち帰り村人と共に幸せに暮らす)
という流れですね。ドラマはこの流れの通りに展開するのですが、ただそのまんまスムーズにいったのでは面白くも何ともありません。ですからそれぞれの中に山や谷をいくつもいくつも作るわけです。例えば、違うライバルや障害が複数現れ、しかも自らに良い影響を与える強烈なキャラのメンターが登場するなど…波乱万丈の展開ですね。
人が感動するのは
にあります。もちろん、主人公の考え方にも共感はするのですが、その考え方に根差した行動に共感するのです。
皆さんの周囲にもいらっしゃいませんか?立派なことを口にされるのだけれども、実際は行動しない人…。これには人間共感できません。いろんな困難に直面しながらも自分の信念を曲げず、ただひたすらに突き進む、その後ろ姿に感銘を受けるのだと思います。
こうした物語を
経営に活かす、マーケティングに活かすという動きが顕著
になっています。なぜ、今の時代「物語マーケティング」が必要とされるのでしょう。
以前にも触れましたが、私たち現代人が受け取る情報量は30年前の10倍とも20倍とも言われています。確かにそうです。ネット一つとってみても単にホームページを見る、メールをやり取りするだけだったのがブログやフェイスブック、ツイッター、インスタグラムなどのSNSツールが世の中を席巻し、とてつもない膨大な量の情報を見聞きすることになりました。
こうなれば、何の情報を信じればよいのか、何が正しいのか、もうわからなくなります。こうした時に真実のできごとを盛り込んだ物語にすることで真実味がグッと増します。
ドラマに惹き付けられる理由として、もう一つの視点があります。それは、
ということです。昔、物がなかった時代、情報が乏しかった時代は比較するものがないため、商品を選びようがありませんでした。ですから店員や営業マンの勧めるままに購入していました。
しかし、今はそうではありません。ネットなどを通じていくらでもどこからでも商品・情報を手に入れることができます。そんな時代だからこそ人はクドクド商品の説明を受ける、説得されることを嫌うのです。
皆さんは経験ありませんか?洋服店などで店員にさんざん付きまとわれ嫌な思いをしたことが…。辟易しますよね。
「ほっといてくれ!」
と。人間は元々、
です。人に左右されたくないのです。そうした観点から「物語」形式を取り入れることで人は話を聞いてくれます。
人間の消費行動に関係する理論で
があります。この理論については別の機会に譲りますが、人間は等しく興味を抱かない限り行動しません。興味を持って初めて次の行動に移ります。その興味を持ってもらう方法として「ドラマ」「物語」が有効と言えるのです。
「物語をマーケティングに活かすことは有効だというのはわかった。でも、うちにはそんな自慢するようなことは何もない!」
とよく言われます。そんなことは決してありません。どんな企業や組織にも大なり小なりドラマが存在しています。ましてや30年、50年と歴史を刻んできた企業ならなおさらです。
そもそも何らのドラマがない企業が存在できるわけがありません。そこに、焦点を合わせていないだけです。しっかりと過去に向き合うことで見えてくるはずです。では、具体的にどんなドラマの種が潜んでいるのでしょう。
・創業時の精神、なぜこの仕事を始めたのか?
・商品開発はスムーズにいったのか?
・大きな失敗、倒産の危機はなかったのか?
・社員の裏切りはなかったのか?
・ライバルが登場して苦境に陥ったことはなかったのか?
・救世主が現れたことはなかったのか?
などなど、その時々におけるエピソードが山ほどあるはずです。これを自社内で思い起こす方法でも良いですし、インタビュアーを外部に求める方法でも良いです。いずれにしても、一定の歴史を刻んだ企業であれば必ず「ネタ」が存在しています。
御社では、財産ともいえる物語・ストーリーを活かす取り組みをしていらっしゃるでしょうか。そのネタを積み上げる工夫をしておられるでしょうか?
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