今回のコラムは、“ギャップ”について考えます。
文字通りモノゴトの高低差を利用して人を振り向かせる手法です。人間にはこれまでの経験を元に「●●●は■■■なもの」といった固定観念が存在します。例えば
実に当り前です。これではニュースにはなりません。しかし、これが次のようだったらどうでしょうか?
これはニュースになりますね。当たり前じゃないからです。人はごく当たり前のことには反応しません。いつも耳慣れ、見慣れているからです。今回はこの当たり前すぎることを突破して注目していただく手法として
について考えます。最後までお読みいただければ幸いです。
ギャップを利用して誰かにモノゴトを伝える。を考える前に、「伝える」と「伝わる」の違いについて考えてみましょう。
私たちは誰もが自分の思いや計画をキチンと伝え、分かって欲しいと願っています。
「しかし、それが難しい…」
実感ではないでしょうか。それほど伝える行為には高いハードルがあります。しかし、そもそも「伝える」を出発点に置くことが問題なのです。
私自身も伝えようとするあまり、まったく伝わっていなかった状況に直面したことが何度もあります。ひとつ例を挙げます。
私は鹿児島を題材にした漫画コンテストを過去7回開催しています。これまでに新聞やテレビ、ラジオ等でひんぱんに取り上げられているのでそれなりに知名度はあると思っていました。しかし、先日大学での講義で受講生にこのイベントのことを知っているか尋ねたところ50人中1人しか手が挙がりませんでした。愕然としました。人は知らないのです。他人には興味がないのです。興味があるのは自分の事だけです。
「伝えたつもり、伝わったつもり、わかってくれているだろう。」はマスターベーション。「伝えた」と「伝わった」にはたった一字違いであるにもかかわらず、代えがたい壁が存在します。
「伝えた」は発信者目線
「伝わった」は受け手目線
です。伝える側は自分の商品やサービスの機能、技術、素材、価格、他の商品との違いを懸命に伝えようとします。このわかって欲しい…の気持ちが強すぎれば強いほど実は受け手との間に溝が生まれます。
伝えようとすること自体が自分目線なのです。受け手(消費者)がさほど興味を示していない段階で機能やスペックを伝えようとしてもギャップが広がるだけです。
あなた自身は何年も何年もそのことに携わってきたプロです。しかし、消費者はいつまで経ってもアマチュアのままです。あなた自身がプロの目線で伝えれば伝えるほど格差は拡がるばかり。順序がそもそも違うのです。受け手は、
が理解できなければ目もくれません。この順序を考えるうえで参考になるのが「AIDMA」です。
AIDMAは、人の行動パターンを表すマーケティング用語で、
1)その商品・サービスの存在を知る(Attention)→
2)興味を持つ(Interest)→
3)欲しいと思う(Desire)→
4)記憶する(Memory)→
5)購入する(Action)
というプロセスから成り立っています。
つまり、いきなりAction(購入・利用)には至らないのです。その大前提が存在を知ることと、興味を持つことにあります。この二つの感情を喚起することが重要です。(ちなみに最近ではAIDEESといってExperience(購入、経験)とEnthusiasm(心酔、熱中)Share(情報共有)を加えたモデルも提唱されています。)
その有効な手段として、私は「マンガ」を推奨しているわけですが、そのことはまたの機会に譲ることとします。
ギャップはお笑いで言うところの“つかみ”に該当します。出だしで掴んでおいて自分の土俵に引っ張り出す、つまり、話を聞いてくれる状況を作るわけですね。
このギャップを利用するテクニックとして
はとても有効です。先日、ある講演会のチラシを見ていたら
「向上心のない方は参加しないでください!」
という表現が用いられていました。有料の講演会ですからたくさんの人に来て欲しいはず。ならばこのような挑戦的な表現は避け、「どなたでもいらっしゃい」のスタンスの方がたくさん来てくれそうです。
しかし、現実はその逆です。本気で人生を変えたいと考える層にこのキャッチコピーは刺さるのです。刺激的なコピーとしてこんなのもあります。
◎日本で一番まずいラーメン屋(客対応は苦手だけど味には自信がある)
◎英語を教えない英語教室(生きる力を英語で教えている)
◎不器用なカリスマ美容師(話し方は不器用だけれどテクニックは一流)
◎家はまだ買うな!(比較検討されても自信のある住宅メーカー)
◎美女なんか嫌いだ(性格美人こそが大事と訴える男のわがまま)
他にも、巷にはこうした手法が出現しています。この手法が功を奏すのは
●●●は■■■なもの
という常識が明確にある商品やサービスです。人は常識と反対のことを言われると
「なぜこんなことを言っているのだろう」
「何か裏があるのかな?」
と考え、その先を知ろうとします。ここで先に進んでくれさえすれば、真実をしっかり語り、そして商品のスペックを語れるのです。ただ、大事なことは
ということです。こだわった良い商品である裏付けがあってはじめて有効な手法になります。
皆さんの会社では、幹部が社員に語る際、“つかみ”を意識してスピーチしておられるでしょうか?また、どこでも使われているようなありふれた文章、きれいに飾られた言葉で広告や広報物を作ってはおられないでしょうか?
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