自社の商品やサービスの魅力・特徴をどうやって伝えるか、について悩んでおられる方も多いことでしょう。これは経営者に関わらず、家庭内でもありがちなことであり、決して絶えることのないテーマと言ってもいいでしょう。でも、そもそも伝える前に「どう見られているか?」も関係しています。今回のコラムはその「伝える」「伝わる」について考えます。
「ええ~っ ビックリ。この俳優さん、70代なんだって…。若いなぁ」
「ふ~ん」
「俺もこんな風に年を取りたいよ。でも、なぜこんなに若いんだろう…」
「それは芸能人だからでしょ」
とは妻の言葉。いつも私たち夫婦はこの話で盛り上がります。でもこれ、答えになっているようでなっていない…。どこかズレてます。
だって世の中には実年齢よりウンと若く見える一般人がゴロゴロいます。とすれば、「芸能人=若い」という公式は成り立ちません。
ここには「若くでありたい…」という本人の願望、意識が大きく作用しています。その願いが強いから若くしていられる、その具体的方法を実践しているのです。
意識のチカラは相当なものです。人間はもともと自らが欲しいと思う情報だけを脳にインプットしている、膨大な情報の中から興味のあるものだけが目に飛び込んでくると言われます。ほとんどの人が見逃してしまうような小さな新聞記事の中から特定の情報に目が留まる、という経験をされた方も多いですよね。
「今日一日、赤い色を探してみよう」と意識すると、あらゆる赤が目に飛び込んできます。赤い洋服を着た人、赤い建物、赤い看板、信号機、ランドセル、郵便ポスト、八百屋さんの店先のトマト、などなど…
これまでほとんど意識したことのなかったものに気づくはずです。「ここにこんな建物があったのか?」と。
芸能人がなぜ若いのか?それは芸能人が「若さ」を意識したから。つまり、「若さ」にまつわる情報を集め、いろいろ試し、それが結果として若さの維持につながっています。さらに言えば、
も大きく関係しています。芸能人は「見られる」役回りだからこそ、「若くしていたい…」という意識が働いているのではないでしょうか。
芸能人に限らず、この「見られている」を意識することはごく自然なことです。例えば女性に「なぜあなたは化粧するのですか?」と尋ねたとき、
身だしなみだから…
習慣だから…
化粧品がそこにあるから…
といった答えが返ってくるでしょう。でも、一般的には根底に他人の目を意識していることは間違いありません。(特に異性に対して…)
もし、この世から男性という存在がなくなったとき女性は着飾るのか?化粧をするのか?さあ、あなたはどう思われますか?
では、ひるがえってあなたの会社では
「見られている」
をどの程度意識しておられるでしょうか?社内で会話されたことがあるでしょうか?見られているのは人間だけではありません。企業も見られているのです。
「分かっているようでわかっていないのが自分自身」と言われるように他人からの目には気づいていないケースが多いように思います。これは企業も同じです。
そこで、敢えて調べてみる、お客様に聞いてみる、という行動をとらないと真実は見えてきません。
アンケートを取ってはじめて「エッ!うちそんな風に見られていたの?」と思えることがいっぱいあると思います。何を隠そう私自身も、お客様はうちの「企画力」を買ってくれていると思っていたのに、選ばれた理由は私の「人柄」だったことに気づいたことがあります。
では、企業の印象はどんな形で作られているのでしょう。
企業の印象をつかさどる要素は大きく分けて「人的要素」と「非人的要素」に分けられます。人的要素には社員の表情、服装、言葉づかい、電話応対、接客マナーなどです。一方、非人的要素には商品そのもの、パッケージ、名刺、看板、車両、広報物、ホームページ、テレビCMといったものまで多くのものがあります。
そうやって長年にわたって培ってきたものが一つの「社風」「イメージ」となって世の中に発信されています。
皆さんの会社では、こうしたことを強く意識しておられるでしょうか。ぜひ、アンケートを取って見られることをお勧めします。そのアンケートも惰性で質問項目を設定してはいけません。お客様の本音が垣間見えるような設定にする必要があります。(このアンケートの手法については次の機会に譲ります。)
では、見られている意識を調べたらそれで終わりでしょうか?そんなことはありませんね。次はいいイメージを持ってもらうために具体的な方策を講じられるはずです。そこで
が必要になってくるわけです。私はこれを
に置き換えています。ただ見せるのではなく「魅了する」です。この会社はイメージが良い、この会社の勧めるものなら何だって買う。他の会社から買うなんて考えられないといった強烈なファン。これこそまさに「ブランド化」ですね。そこまでファンになってもらえればこんなに強いことはありません。では人がそう感じてくれるには何が必要なのでしょうか。
そこに足りないのが、社長や社員の想い、経営理念、歴史などです。しかも、これには社長や社員の日々の動き、雰囲気がわかるような行動も付加している必要があります。(言葉だけなら何とでもいえますから…)
「いや、うちはキチンと伝えているよ、ホームページにも書いてあるよ」
とおっしゃる方もいらっしゃいますが、それが得てして伝わっていないのです。杓子定規な挨拶やコメントに終わっているのです。しかも笑顔もなく、免許証のような写真。これでは人間臭さが伝わりません。
もっと
を盛り込んでいかなければ人は真実味を感じてくれません。
商品を作る過程で、会社を立ち上げる段階でどのような葛藤があったのか、どうやって乗り超えたのか、社員はなぜこの社長について行こうと思ったのか、この商品が生まれた背景に何があったのか、などについてキチンと伝える必要があります。
こうした企業の想いを、デザイン等を通じて表現していくわけです。それでやっと伝わるのです。「魅せる」とは「伝える」こと。相手に伝わるように「伝える」こと。
しかし、私がこうお伝えしても「デザイン等で着飾るより、商品のクォリティを上げるのが先ではないか…」といったご意見をいただくこともあります。たしかにそうです。デザインだけで商品のイメージを引き上げることはできません。しかし、商品だけでイメージを引き上げることも至難の業です。この二つが相まって初めてブランド化が図れるのです。
あなたの会社では見られることに意識を向け、自社の特徴、訴えたいことを「魅せる」レベルにまで高める工夫をしておられるでしょうか?社内で共有しておられるでしょうか?
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