今回のコラムは「説明・説得」について考えます。先日あの「LINE」からDMが届きました。さすが大手企業、立派な装丁で理路整然とした表現、洗練されたデザインが見る人の興味をそそります。
中には、しっかり「マンガ」を盛り込み、興味を引き立てる工夫もなされていました。うれしいですね~。こうしてマンガを評価して下さることは…
しかし、マンガのページについては
「ん?」
と首をひねりたくなるような部分がいくらかありました。そこで、今回はこのDMを題材として考えてみたいと思います。
LINE社には大変失礼ですし、あら探しをしているみたいで大変迷ったのですが、懐の深い企業だと信じ、お許しを願いたいと思います。(もちろん私もユーザーの一人としての提言でもありますし…)
封筒には何枚かのチラシ(パンフ)が入っていました。その中でもキャラクターをドンと配置した一枚がやっぱり目立ちますね。私がマンガづくりを仕事としていることを差し引いてもマンガはやっぱり目立つのです。それはなぜか?
です。最近でこそマンガを取り入れた広告物が増えてきましたが、まだまだごく一部です。だから消費者にとっても珍しいのです。何しろマンガにするのは面倒くさいし、コストもかかりますからね。今回のこの事例、表紙はインパクト十分です。しかも今どきの若者向けタッチ。思わず手に取りたくなります。
では、中のページに進むとしましょう。左面にマンガ、右面に解説というレイアウトです。これ、実によくできています。確かにマンガはインパクトがあり、人の興味を惹き付けてくれる力があるためすべてのことをマンガで完結させたいところです。しかし、そうなると膨大なページになってしまいます。
商業マンガの世界ならそれもありでしょうが、広告マンガではなかなか許されることではありません。予算にも限りがあります。そこで、マンガ面で「興味喚起」、文章面で「納得」という役割分担をさせるわけです。
その観点で見た場合、マンガ面がやや「解説・説明」に偏っているように感じます。マンガのセリフの役割は
にあります。登場人物の心の動き、内面を表現することです。それなのにセリフで「あーだこうだ」と説明されると「売り込み」になってしまい、敬遠されてしまう、つまり先に進んでくれないのです。中断されてしまったのでは所期の目的を達成できません。
そもそも、いきなり男女が題材の「広告」について深く会話するか?というとちょっと疑問です。もし、どうしても会話をさせたいのなら、広告しなかったことによるマイナス面をまず強調する、もっと身近な話題から入るという「前振り」が必要です。例えば、恋愛の話やグルメの話で盛り上げ、結果として広告の話に持っていくような…
以前から何度も触れてきたように、人は「AIDMA」という流れを経てモノやサービスを買っています。
Attention 「注目」→
Interest 「興味」→
Desire 「欲望」→
Memory 「記憶」→
Action 「行動」
ですね。しかし、このパンフレットでは、やや商品の説明が早いような感じがします。つまり、「興味」の喚起が足りない。これでは先を読もうという気になってくれない可能性があります。
あ、もちろんこのLINE社の広告で多くの人が興味を持ってくれる可能性は高いです。なぜならスタート地点において知名度で圧倒的に有利な立場にあるからです。知っているところからのDMには警戒心がないですから…
しかも可能性の高い企業、業界をセグメントしてDMを送っているはずですから元々関心の高い人が多いはずですから。
しかし無名の企業はそういう訳には行きません。聞いたこともない、見たこともない企業の広告であれば、いかに最初の時点で読んでみようと思わせるかにかかっています。しっかり読んで警戒心を解き先に進んでもらう道筋が必要なのです。
を意識した情報発信を心掛けましょう。
話は変わりますが、皆さんはこんな経験ありませんか?お店でいきなり売り込まれて気分を害したことが…。
例えば、洋服店で
「今日はどんな洋服をお探しですか?」
「は、まあ、今度旅行に行くので…」
「あら、ご旅行ですか。いいですね」
「ええ、まあ」
「ところで好きな色とかスタイルとかございますか?」
「特にはないんですけど…」
「それでしたらこの洋服などいかがでしょう?」
「はあ」
「この素材はとても軽くて、汗も吸収してくれるので旅行先でも重宝しますよ」
「はあ」
「なぜ軽いかといえばこちらのメーカーはですね。長年にわたって・・・」
「・・・」
さすがにここまで露骨な例は少ないと思いますが、私も似たような経験が何度もあります。まさにこれなどお客の興味や欲望などお構いなしの事例です。しかし、こうしたことが広告の世界では当たり前のようにはびこっているのです。
人は他人に説得されて物事の判断をすることを嫌う生き物です。売り込まれたらどんどん興味が薄れていきます。自分の意思で決めたい、利用したいと考える生き物です。例えそれが結果としてまずい選択だったとしても納得できるし、自らの判断を正当化したりします。
では、なぜこうした表現がまかり通るのでしょう。これには広告を出す側(つまりお店側)が
してしまっていることが大きな原因の一つです。その商品の素晴らしさやメリットなどがわかりすぎるぐらいわかっているため、初歩的なこと、素人の疑問をすっ飛ばしていきなり本題に入っているわけです。しかも、自分が魂を込めて作ったものだけにその良さを分かって欲しいがために力が入ってしまう。しかし、それを言えば言うほど人は敬遠してしまいます。
つまりお客の悩みがどこにあるのかが見えなくなっているのです。売り手の情熱とお客との感情にずれが出てしまうんですね。こういう時こそ、素人目線、お客様目線に戻ってみる必要があります。(実はそれが一番難しいことなのですが…)
そのメッセージの順序として有効になってくるのが下記の順番です。
◎今、●●という問題を抱えて困っていませんか? →
◎これを放置したら大変なことになるかも! →
◎でも、あなたと同じような悩みを抱えている人が世の中には一杯いますよ! →
◎その人たちは「●●●●」という商品で解決しました →
◎論より証拠、その方々の感想をごらんください →
◎この商品の特徴は次の3つです →
◎それでもいきなりこの商品を買うことには抵抗がありますよね、そのためにお試し制度も設けております。 →
◎さあ、お問い合わせは今すぐこちらへ
この順番で広告を表現して初めて人はその気になってくれます。伝える順序を間違えると嫌われる。いかがだったでしょうか。
それでは最後のまとめです。広告に限らず、情報発信の「導入部分」では
顧客の悩みを浮き彫りにし、寄り添う存在であることを実感していただく
そのあと、良さそうだな、もっと詳しいこと聞きたいなと思っていただけた人に説明する
という流れです。その悩みや問題を解決する手段としてあなたの商品やサービスが存在するという位置づけが重要です。
ぜひ、実践してみてください。今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
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