いつも通勤途中で見かける看板。私とはまったく縁のない会社ですが、なかなかセンスのいいデザインだなあと魅入っております。
社名の頭文字「T」と「G」を「Technology&Green」にうまく掛け合わせていますね。しかも清潔感のあるホワイトと深みのあるグリーンの組み合わせが絶妙です。色は人間の生活に大きく影響しています。食欲をそそる色、高ぶった感情を静めてくれる色、エネルギーを充満させてくれる色etc.
色、デザインは今いろんな分野で活用され世の中を動かす要素として評価されるようになってきました。まさに、
なのです。私が独立したての頃(30年以上前)は、まだまだデザインに対する理解が低くてハード(モノ)さえ良ければそれでいいという時代でした。
「エッ、デザイン料が必要なの? 印刷代を払うじゃん」
「デザインなんて紙と鉛筆でチョチョッとやるぐらいのことじゃん」
「モノさえ良ければ商品は売れるんだから…」
そのような言葉がガンガン飛び交っていました。私はこんなことも経験しました。ある方を通じてお医者さんを紹介されたのですが、独立開業にあたってロゴマークを作りたいとのこと。ひとしきりテイストや信条、醸し出したいイメージなどの希望をお聞きし、それではお見積りをお出しします。と答えたその後に耳を疑うような言葉が。
「他の業者にも何社か声を掛けてあるからね。だから何案かつくって持ってきてごらん。気に入ったら採用するから…」
つまり、まず無料で作って持ってきて…という要望です。確かに今の時代ではネットの普及により簡単にコンペ形式でこうした商習慣が成り立っています。しかし、当時はツールが普及していないこともあり、このような手法を取ることは難しいことではありました。
もちろん、コンペ形式を否定するつもりはありません。建物の設計などでは今でも広く行われています。しかし、決定的に異なることがあります。ロゴマークをデザインした段階でそれはほぼ最終形、納品したことと同じになるのです。
しかし、建築設計はその図面をもとに建築物という完成形づくりが始まるのです。まあ、そんなわけで「まったく我々の業界を何だと思っているんだ!」と憤ったものです。
また、ドクターが患者から「キチンと治ったらお金を払うよ」と言われたらその条件を呑むのだろうか?」などと想像したりもしました。聞いてみたかったですね。でもそれはやめときました。多分そのような価値観がまだ医療界には理解されているようには感じなかったので事を荒立てず辞退させていただきました。
ただ、その場でお断りしたことが随分ご機嫌を損ねたようで、後日紹介者からこっぴどく怒られました。やはり、断るにしても順序があるんだなと気づかせていただきました。
まあ、そんな失敗談をいくつも経験し、現在に至っています。ようやくデザインの価値を認めてくださる方が増えてきました。
ではなぜデザインが真っ当に評価される時代になったのでしょう。
に大きな理由があるように思います。つまり、世界中がグローバル化、情報の高度化によりあらゆる物や情報が垣根を越えて手に入る、つまりモノ余り時代になってしまったのです。
どの家庭にもテレビや洗濯機、冷蔵庫、車、パソコンなどひと通りのものがあります。また、どのメーカーの商品だって甲乙つけがたい品質になっています。
そこで人々が商品を選ぶ基準がモノから「見た目」「雰囲気」「物語性」というソフト分野に移ったのでしょう。それがデザイン重視の社会になった最大要因と考えます。
デザインには人を動かす力があります。例えばこんな経験ありませんか?お菓子屋さんのショーウィンドウで眺めたケーキが美味しそうだったので思わず買ってしまったことが・・・
これは、食べる前に
「おいしそう」
と感じたからですよね。それはカタチだったり色味だったりしたのではありませんか?まさにそれがデザインのチカラです。
という要素があるのです。皆さんもこうしたデザインの力をぜひ実践的に活用なさってみてください。