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第36話 世の中は両面から成り立っている ~会食を控える風潮に歯止めを~

今週のコラム、テーマは今話題となっている「会食」についてです。

大手企業と官僚との会食がメディアを賑わせていますが、どうも「会食」そのものが悪者になっているような気がしてなりません。「会食」そのものと「利害関係者からの接待」とは分けて考えるべきです。これをごっちゃにすると行政および企業の双方が委縮し、情報交換さえもできなくなってしまう危険性があります。

そもそも「食」には何の罪もないにかかわらず「コロナ」感染拡大の局面でも「食」がやり玉に挙がりました。確かに飲食店において「大勢で、しかも大声で騒ぐ」という場面に遭遇したことがありますので、一つのファクターであることは間違いありません。

ただ、飲食業だけが感染拡大の元凶になっているかのようなイメージがはびこっているのには違和感を覚えます。より一層の対策を施しつつ飲食業の方々には頑張っていただきたいものです。

また、今回の会食問題だけでなくコロナの拡大を機に、世論や思考がどちらか一方に大きく偏る傾向があるような気がしてなりません。この世界は

「表があれば裏もある」
「右があれば左もある」
「上があれば下もある」

というようにすべて二面性・両面から成り立っているのであって「ゼロ」か「100」はあり得ません。

本音は常に隠れている

さて、「食」そのものについて考えてみます。「食」という漢字の成り立ちは「人」を「良くする」からきております。食コミュニケーションと言われる通り、食は単にお腹を満たすだけのものではありません。人の心を豊かにする役割があるのです。そこで私は声を大にして節度を守ったうえでの「会食」を推奨します。昔から言い古された言葉に

同じ釜の飯を食った仲間

というのがありますね。学生時代はおろか、社会人になってからも同じ環境にいた仲間としての交流は続いていきます。同窓会、同期会、サークル会etc.

会食の目的は、旧交を温める、懇親を深める、情報収集を行うにあります。そして、会食の最たるメリットは「本音が出やすい」ことにあります。「リラックスした雰囲気」が醸し出されるため本音が出やすいのです。堅苦しい会議の場や、スクール形式のセッティングでは本音が出ませんね。

実は、会食などの場で人がふと漏らす「ため口」「ボヤキ」の中にヒントが隠れているものです。それを象徴するかのようなできごとを先日経験しました。

会食がもたらすメリット

私の友人とその知り合いの銀行マン(40代前半、中堅どころの役職者)の3人で会食しました。銀行マンと面と向かって酒を飲んだのは実は初めてでした。それまで、銀行マンが我々と酒を飲むというイメージがなく、常にいくらかの距離を保って親しくしてはいけない…そんなイメージしかありませんでした。

もちろん、経営者団体の懇親会で銀行マン(特に幹部)と同席する機会はありましたが、それは親しく飲むというのではありません。それほど私自身にとっては敷居が高かったのです。

それが、話が進むうちに実に興味深いことが聞けました。彼が言うには酒を飲むのは同僚との場合がほとんどであり、中小企業経営者とは少ないというのです。また、日中経営者と接しても出てくる話は景気のこと、自社の業界のことに集約され刺激が少ないというのです。

私が自身の仕事で今後のビジョンを話したことをとても新鮮に感じたようです。私自身、たいそうな話をしたわけでもないのですが、私が所属する経営者団体での学びやこれまでの経験から得た知識、ノウハウがとても新鮮だったようです。

実は、このような金融機関に限らず行政との間でも深い部分での情報交換、会食の場が少ないのではないかと思います。それが表面的な意見交換にとどまっているのです。

私が所属する経営者団体では、「中小企業こそが地域社会の主役である」ということを行政の施策の中心に据える「中小企業振興条例」の制定を自治体に働き掛けています。これまで長い間

「大きい会社」が良い会社

という価値観がまかり通ってきた社会にあって、中小企業の評価は家庭でも、教育機関でも低くなりがちでした。しかし、鹿児島県では実に9割の人が中小企業で働いています。地域は中小企業で成り立っているといっても過言ではありません。

ならばもっと中小企業の視点で取り組んで欲しいとの思いからこうした運動を展開しています。今、県内でもようやくこの条例を制定する動きが芽生え始めています。

しかし、これがまだ機能していない!というのが実態です。なぜなら「条例」は努力目標、スローガンであって実際機能させるには「行政」「金融機関」「学校」そして「中小企業」が同じテーブルについて具体的な議論を交わす、実行する機関が必要なのです。

残念ながらこれが有名無実化している、行政の単なる実績づくりで終わっている事例が多いのです。

つまり、四角いテーブルを囲んで向こうとこちらで意見を述べ合ってハイ終わり。これが実態です。これでは本音が出る訳がありません。具体的なヒントにつながる「ボヤキ」や「ため口」が漏れてくることはないのです。

だからこそ、「会食」と「接待」はキチンと分けて考え、行政・企業双方の課題を浮き彫りにできるような本音が出るような場が必要なのです。

行政も企業も単独では成り立たない

行政は行政だけで、企業は企業だけで動くことは現実不可能です。企業が新たな事業に取り組む場合、法律的な面、制度面、地域ビジョン、許認可事項など行政と一体になって動かなければならない側面が必ずあります。また、行政は住民の声を吸い上げることによってはじめて良い施策を実行できます。

そうした点からももっと実のある交流が「官」と「民」には必要なのです。

だから「会食」なのです。もちろん、特定の利益供与になってはいけないし、節度を持って割り勘などの方式を取ることは当然です。

しかし、今コロナ感染症の問題もあるでしょうが、「会食」をすると猫も杓子も色眼鏡で見てしまう。この風潮には歯止めをかけないといけません。そうしないと経済は衰退するばかりです。活力が失われます。

この銀行マンが私ら二人の話に刺激を受けたのと同じように、企業の実態を知るには数字的な統計だけでは見えてきません。酒食を共にする、リラックスした場こそ真実が潜むものです。

私たちもメディアからもたらされる情報を一元的に捉えるのではなく、多面的に判断するメディアリテラシーを身に付ける、世の中で起こることには必ず両面・二面性があることを意識してまいりましょう。

さて、今回のコラムいかがだったでしょうか?最後までお読みいただきありがとうございました。

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