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漫画化家道コラム
第43話:満腹な人に料理を食べてもらうには?

広告業界に携わって40年。これまで多くの制作現場に立ち会ってきましたが、どんなに年月を経ようと変わらないことがあります。それは

人にものを伝えるのは難しい

と思われていることです。人にものを伝えることを生業としている私たち業界人でも常に頭を悩ませているのは事実。

ある市場調査会社のアンケートによると、「自分自身は人にものごとを伝えることに自信がある」と答えたのは16%。「とても苦手・少し苦手」が84%と否定的に捉えている人が圧倒的でした。それほど伝えることへの劣等感を感じている人が多いのが実態です。

しかし、だからといって広告、情報をつかさどっている根底部分、お客様の心の動きはいつの時代も変わることはありません。扱うツールが変わっている、顧客の価値観が多様化しているだけのことです。

人は頭がパンク状態

~「私には関係ない!」という気持ちをまず突破する~

物事を伝えるうえでの悩みはだいたい以下のようなことに集約されます。

◆お客が商品に興味を持ってくれない、見向きもしない
◆説明しにくい商品であるせいか、理解してもらうのに時間がかかる
◆人を惹き付けるような気の利いた文章が書けない
◆世の中情報が多過ぎて、自社の広告が目立たない etc.

こうした悩みは、

モノや情報があふれ過ぎてお腹が満杯状態になっていることに起因しています。モノ不足の時代ならともかくあらゆる商品が世にあふれ、特に必要なものはないという時代です。

さらに、マスメディアはおろかネット社会の進化により「何が本当で、何がまずいのか」さえも分からないほど複雑怪奇な情報が飛び交っているため、もう頭の中がこんがらがっています。

だから人はいろんな情報に触れても一瞬で「私には関係ないわ」と判断しているのです。まずここが第一関門

特に今はコロナの話題などSNSの普及で裏の取れていない情報が氾濫し、私たちの頭、お腹は満杯状態なのです。

そんな満腹状態の人にさらに食べてもらうには、そう、女性がよく口にする「スイーツだけは別腹なのよね…」という要素を見出すことです。

モノづくり志向が強すぎると伝わらない

~聞き手が漠然と持つ不安や不満を切り口にする~

ところが、この伝える側になったときに冒しやすい間違いが、

自分が言いたいこと、伝えたいことが中心になってしまう

ことです。伝える順番が間違っているのです。私が時々参加する公的機関主催の新製品開発、新サービス展開のプレゼンテーションでも大多数(約8割)がまず商品のスペックから説明し始めます。

技術畑、開発型企業は商品に自信があるから説明に一生懸命になってしまいます。その熱意は十分わかるのですが、聞き手からしてみると、聞く準備ができていないのにいきなり説明をはじめられても売込みにしかなりません。

例えば、空腹で食事をとる準備ができているならいざ知らず、ほぼお腹が満杯の状態の人にさらに食事を勧めるようなものです。

「今関心も必要性もないのに、なぜ、その説明を聞かなければならないのか?」
「私にどんなステキな暮らしを届けてくれるのか?」
「それを採用しなかったらどんな不便なことが起こるのか?」

といった、聞き手が持つ不安や不満の前提条件が必要なのです。

そのうえで、「あなたの●●という欲求にこの商品はお役に立ちますよ!なぜなら●●という要素が含まれているから…」という論理ですね。

この前提を経て初めて商品説明へと移ります。

伝える順番で理解度がガラリと変わる

~フルコースの料理を出す順番を間違うと興ざめする~

さて、プレゼンに重要なのは先ほども申し上げたように「順番」です。これまで何度か皆さんにお伝えしたAIDMA理論について再度お伝えします。

人間は物を買う際、特に高額商品の場合、必ずと言っていい行動パターンを通ります。それがよく知られた「AIDMA」です。

A Attention(注意・認知)
I Interest(興味・関心)
D Desire(欲求)
M Memory(記憶)
A Action(行動)

この流れに沿って人は行動を起こします。目に飛び込んできた商品をいきなり買うのは高額であればあるほど可能性が低くなります。

ここでは、高額の美白化粧品を例にとります。ターゲットは50歳代半ば女性と仮定します。

最近化粧のノリが悪くて困っているAさんはパートタイマー勤務。今朝も夫と子どものお弁当を作り、自分も出勤の準備をしています。最近、仕事が忙しくてちょっと疲れ気味です。ですから、いきおいお化粧もおっくうになりがち。

そんなAさんは、そそくさと新聞の3面記事とテレビ・ラジオ番組欄に目を通し、折り込まれていたチラシを1枚当たり0.5秒のスピードで回収ボックスに放り込みます。そのとき、たまたま一枚のチラシに手が止まりました。

あら、この人テレビで見たことある。誰かしら?あ、昔テニスプレーヤーで大活躍した人だ。それとこの隣の人だれ?

あ、彼女のお母さんなの。え、いくつ?私と同い年?まさか、ウソ、若い…

それと、右の暗いオバハンの写真は。え、同一人物?信じられない

はい、ここまでの描写があってはじめて人は興味を持ってくれます。この過程は必須なのです。ここまで行って初めて先へ進んでくれます。この感情の高まりがない限り人は先には進んでくれません。そして、このあと

・これはどんな素材でできているのかな?売れているのかな?→
・実際使った人の評判はどうなのかしら?→
・50代の人がいっぱい感想寄せてるのね。何だか良さそうだな→
・どこのメーカー?かなり歴史のある会社なんだ。→
・ほほう、この分野についてはかなり自信があるみたいね→
・おや、サンプルを請求できるみたい→
・まあ、だまされたと思って一度請求してみようかしら…

だいたいこのようなパターン、心理状態を経てアクションに至ります。

最近ではこのAIDMAが進化してAISAS理論、AIDEES理論もあります。Actionに移る前にSearch(検索)、Share(共有)、あるいは体験(Experience)、心酔(Enthusiasm)が加わりました。

ネットの進化の影響ですね。「本当にこの商品でいいのか」を、ネットを駆使して他人の評価を調べるのです。そしてまた、買った後、自分自身が納得するために「共有」を図ろうとするわけです。

以上のように、お客の行動に合わせてこの流れを意識して有効な販促手段を講じていかなければなりません。豪華なフルコースの料理もいきなりメイン料理が来て、最後に前菜が出てくるようではお腹の調子が狂ってしまいます。料理にもキチンとした順番があるように伝え方も順番がポイントです。

皆さんもぜひこのことを意識して取り組んでみてください。マンプロもあなたの後押しをいたします。

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