~本能を刺激するキャッチフレーズを考える~
せっかくいい商品や技術がありながら、それがお客に届かず売れない。そういったケースは山ほどあります。何を隠そう、我が社の主力商品でもある「かごしま漫画クロデミー賞」も残念ながら知名度はかなり低いです。
先だって地元大学の社会人講座で講師を務めさせていただいた際、出席者にクロデミー賞のことを尋ねてみました。すると、参加者25名中知っていたのはわずか1名。いかに自分の思いと一般との間に差があるかを痛感させられました。
そうです。悲しいほどに世間は私たちのことを知らないのです。商品やサービスに自信があるならばより一層こちらのことを知っていただく努力をする必要があります。今回はその視点から表現力アップについて考えてみます。
世の中の商品やサービスは「ニーズ型」と「ウォンツ型」に大別されます。ニーズ型商品とは
「・・・ねばならない」
でくくられる商品です。代表的なものとして、車検、免許更新、NHK受信料、教科書、ガス・電気・水道などのインフラ、肌着、普段着、一般的な食事etc.
つまり、車検は2年に1度必ず「受けなければならない」という定めがあります。普段の食事もまずは摂らなければ飢え死にしてしまいます。こうした商品がなければそもそも生きていけない、という根底に根差した商品が「ニーズ型」商品。
一方、宝石やヴィトンのバッグ、エステ、豪華なフランス料理、あるいはゲーム、映画、レジャーなどのエンタメ商品・サービスは生きていくうえで絶対必要か?と問われればあればいいけれど無くても生きていけるものです。
「こういうのが欲しい」「よく見られたい願望」という欲求に沿った商品が「ウォンツ型」商品になります。
底堅いのは「ねばならない」型の商品で、必ずやってくる必然性がありますのでビジネスとして安定はあります。しかし、これには爆発的な要素は薄いです。ブームを呼び起こすのは「ウォンツ型」商品になります。要はこの組み合わせが大事ということですね。
そうした視点で、先日興味深いニュースを見ました。電動アシスト付き自転車が市場の中で一定の地位を占めるようになってきたのですが、この市場に三輪自転車がブームになりかけているというニュースでした。
電動アシスト付き三輪自転車に多くのメーカーが参入
このニュースを耳にしたとき、いつの時代も変化に対応して新しいものが生まれるのだなという思いを強くしました。今の私たちを取り巻く環境変化だけでも少子高齢化、人口減少、環境破壊、DX時代、ジェンダーレス、グローバル化といった変化の波の真っただ中に私たちは生きています。
そんな時代変化の中で、「免許返納」をする高齢者が年々増えています。高齢者がブレーキの踏みまちがいや逆走運転などをして大きな事故になったニュースをよく目にします。こうしたことも相まって警察庁の「運転免許統計」によれば2019年には約60万人が免許を返納し、中でも85歳以上の14%が返納しているという状況です。
認知機能、運動機能が低下してしまった高齢者が先取りして免許を返納する。端的に捉えればその話で終わりです。しかし、ことは簡単ではありません。
免許を返納してしまったがために行動範囲が狭まり、家に籠ってしまって運動機能が落ちる、他人との交流が減って認知機能が低下するという負の側面、新たな問題が現れるのです。これは由々しきことです。そこに着目したのが
なのです。
三輪自転車といえば後輪が二つというイメージがありますが、あるメーカーが開発したのは前輪が二つになっていました。これは操作しやすい、安全という両面からこの形になったとか。試乗した方がとても運転しやすい、倒れにくい、方向の切り替えがスムーズとレポートしていました。
高齢者にとって最も関心が高いのは「安全であること」「操作しやすいこと」の二つです。体力、判断力が落ちているからこそのニーズですね。高齢者には車の運転はしていたけれど自転車もダメ、バイクもダメという人も多いです。そんなスキマを埋めてくれる商品となる可能性高いです。
何より免許が不要であり、しかも電動アシスト付きなので力があまりいらない、ということは少し遠出ができる、新しい楽しみを見つけ活動できる、アクティブなシニア生活を手に入れることができるわけです。
実は、この自転車。レジャー用だけではなく業務用としてのニーズもあるのだそうです。特に都会で駐車場所に困る運送業者などが注目しているそうです。あるメーカーでは80kgまでの荷物を搭載できるタイプを開発しました。
また、車のディーラーは免許返納と同時に車の償却を依頼する高齢者に「電動アシスト付き三輪車」を提案しているのです。実にいろんなところにビジネスの芽があることを実感させられます。
あとは、この商品の魅力をどうわかりやすく伝えるか?が必要になってきますね。ここで威力を発揮するのが
による魅力の発信です。
短い言葉で、その魅力をひとことで伝えきる。これは実に大切なことです。訓練しないとついつい長い言葉になってしまいます。
さて、皆さんはご存知でしょうか?ヤフーニュースのタイトルが「13文字」であることを。
つまり、長いタイトルでは読んでくれないためにこの文字数が規定となっています。では、なぜ長いタイトルではいけないのでしょう。次の二つに集約されます。
伝言ゲームをみればわかりますね。ちょっとでも長い文章を次から次へと伝えていくと人数が増えれば増えるほど最後の人の答えはトンチンカンなものになってしまいます。それほど人間の記憶はあいまいということを物語っています。
人間は30年前と比較して10倍とも100倍とも言われる情報洪水の中にいます。こうした情報が知らず知らずのうちに耳や目から飛び込んでくるため、いちいち対応していたら頭がパンクしてしまいます。だから今日のない情報はすっ飛ばしてしまいます。だからこそ、最初の入り口であるタイトルで惹き付けておく必要があるわけです。
また、タイトルを短くするということは自らが伝えたいことを絞って本当に伝えなきゃいけないことがわかる。につながっているのです。
以上のことから今回の電動アシスト付き三輪自転車のキャッチフレーズ、私なりに考えてみました。ポイントは
です。安全な乗り物であってしかもアクティブなシニアと見られたい願望を満たす、を前提に考えてみました。こうした場合、誰でも考えつくような平凡な言葉、ありきたりな言葉では刺さりません。そこで考えたのが
~安全・快適なアシスト付き三輪自転車で新たな感動探しを~
13文字をちょっとオーバーしてしまいましたが、いかがでしょうか?まだまだ粗削りですが、何とか短くまとまりました。
皆さんもぜひ「13文字」を意識しながら伝えることに注意を向けてはいかがでしょう。