日曜の夜は悩みます。NHKの大河ドラマを見るか、「ポ●●と一軒家」にするか、結局はチャンネルの優先権を持つ妻に従い後者を見ます。60代後半となる二人ともノスタルジック、幼い頃の想い出や大自然の中で育った郷愁が脳の中に深く刻み込まれているせいなのでしょう。ほぼ欠かさず見ています。山あいの集落出身だったにもかかわらず。
この番組が人気なのは、「都会は人が多いもののSNSの普及で繋がりが希薄になった、コロナで群れることがままならない、だったら自然と戯れる方が人間らしい…」そんな価値観が増えているのではないかという気がします。
「視聴率10%超えなら大成功」と言われる放送業界において、同番組はつねに20%近い視聴率を記録しているそうです。
さて、今回のコラムは番組自身ではなく、健康食品メーカーと番組コラボのTVCMについて考えます。
「ポ●●と一軒家」とコラボしたのは天下の「サ●トリーウェルネス」社。ゴマやDHA、黒酢、ニンニク、サメの軟骨に関連する健康食品など多数発売しています。同社は健康食品の通販分野ではトップシェアを誇る企業。その企業が人気テレビ番組とタイアップCMを作りました。
テレビをひねれば毎日CMのオンパレード、もの凄い量の情報が世の中にあふれています。こうするともう、さっき見たCMが何だったのかさえ思い出せないほどです。そうした状況下でメーカーはどうやって興味を惹くか必死に考えているわけです。その中で、今回のタイアップCMはググっと引き込まれました。なぜなら
「来週の予告編かな?」
と思えたからです。CMの入り方、人物の登場、まさに番組と全く同じ。途中で「あ、これCMだったのか…」と気づかされました。しかもその流れが実にスムーズ、嫌みがまったくなかったのです。それは登場人物が人里離れたところで一人暮らしを満喫している男性、しかも同社の健康食品を愛用して元気に作業をやっているシーンだったからです。
まったく違和感がない、逆に「この健康食品を摂取しているからポツンと一軒家で暮らしていけるのだ!」というイメージが沸いてきました。完璧に私の頭の中にインプットされました。
このCMの秀逸さはブランド化されたもの同士をタイアップさせたことです。つまり、
健康食品のS社もかなりのCMを流しており知名度は抜群です。いわゆるブランド力はかなりあります。親会社は酒造メーカーですが、ビールのシェアは3番手4番手ですが、通販分野では先駆者です。
この知名度、安心度と番組の高視聴率、この両方を掛け合わせたら効果は推して知るべし。ぜひ参考にしたいものです。
しかし、このコラムをごらんの皆さんの中には
「いやいや、それはTVCMを大量投下できる大企業の話でしょ」
とおっしゃるかもしれませんが、中小企業でも十分活用できます。自社の中でも他社に負けない商品やサービス、あるいは“人”そのものが存在するはずです。探せばきっとあるはずです。そうでなければ長い年月存在しえなかったはずですから…
そうした観点から様々な企業と連携するのは一つの方策です。いえ、企業だけではありません。教育機関、行政、NPO、地域自治会などと組むことで新たな世界が見えてきます。
弊社でもそうした事例があります。まず、一つ目の事例
ある建設業のアニメCM制作を受注した時のことですが、専門学校2校とタイアップしました。1校とはキャラクターの色塗りや背景の制作。もう1校は声優の起用。このことにより、新聞やテレビ、ラジオ等で取り上げられ、クライアントと共に知名度向上に役立ちました。
また、知り合いの広告代理店ともタイアップしました。鹿児島市電の車内をジャックする企画です。
内容は「認知症予防」関連の広告。広告主はほとんどが「医療機関」です。認知症の予防法、行政の相談窓口、日頃の注意事項、行政の各種施策、これをマンガ形態でデザインし、そうした情報の合間に医療機関の広告を挟みました。するとどうでしょう。電車内の乗客がチラホラ広告に目をやっているのです。こういうことはめったにありません。それはなぜか?
にあります。電車内がすべて同じ諧調・デザインでぐるりと取り囲んでいるから否が応でも目に入ってくるのです。しかもマンガですから…人は関連付けた情報に反応しやすいのです。
これがもしファッション、美容室、デパート、アミューズメント施設など雑多な情報の中にポツンと医療機関の情報があった場合、気づくでしょうか、じっくり見てくれるでしょうか?
おそらくその他大勢に埋もれて大多数が気付くことはないでしょう。私がいろんな会合で電車の広告を見て「マンガプロジェクト鹿児島」の存在を知ったという方がたくさんいらっしゃいました。たった一両の電車広告だったにもかかわらずです。
以上、今回は連続性、テーマ性について考えてきました。ご参考になさってください。皆さんの企業にも気づかない魅力がきっと眠っているかもしれません。