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第64話:魂を震わせるスピーチ

いよいよ参議院選挙が始まります。今回はこの話題を取り上げます。ただ、ここでは特定の政党を推薦する意図はまったくありません。皆さんの投票行動の一助になればとの思いから書きます。

先日、鹿児島市内の繁華街を歩いている際、新規政党(正確には政治団体)の街頭演説に出くわしました。

しばらく私もそこにとどまり主張に耳を傾けていましたが、何を言いたいのかがさっぱりわかりませんでした。ちょっと難しい、かつ私たちの実生活と離れた次元の訴えだったように思います。

一方、最近ネットの世界で急速に知名度を上げ話題となっている党があります。またたく間に党員が5万人を超えたという参●党です。大阪府内の市議会議員を務めていた神●宗●氏を中心に2年前に立ち上がった政党です。

そこで、同党の選挙戦略をマーケティングの観点から分析してみたいと思います。

現代にマッチしたマーケティング戦略

以前から何度もお伝えしているマーケティング戦略の基本中のキにAIDMA(Attention認知→Interest興味→Desire欲求→Memory記憶→Action行動)があります。しかし、ネットや文明の発達がもたらしたモノ、情報の流通によりこの観念が大きく変わってしまいました。そのひとつがAIDEESモデル

1.Attention(認知)
2.Interest(興味)
3.Desire(欲求)
4.Experience(購入、経験)
5.Enthusiasm(心酔、熱中)
6.Share(情報共有、拡散)

この考え方の特徴が後半のExperience、Enthusiasm、Shareにあります。特にネット時代の特徴ともいえるShare(情報共有、拡散)が威力を発揮し、同党も最大限活用しています。

今では、同党の街頭演説を撮影しYouTubeなどの動画サイトにアップロードしている人たちがどんどん増殖しています。まさに、ここに特徴があるのです。ネット戦略をPRの中心に据えて行動しているのです。同党の戦略をもう少し詳しく見ていきましょう。

「日本を取り戻す」が一丁目一番地

そもそもマーケティングは、

目的の明確化(何のために、Why)→

誰に(おもな対象は、Who)→

何を(どんな価値を、What)→

どのように提供するか(How)

という流れで組み立てていきます。

まず、同党の目的です。ここから先は私の主観に基づいているのでご容赦ください。同党は日本の古き良き伝統、日本人としての誇り、文化、家族愛、隣近所との絆、祖先への感謝などによく言及しています。

ところが日本人が大切にしてきた古きよき伝統が敗戦を機に急激に欧米化したことを危惧しています。敗戦後米国から押し付けられた憲法への疑問を呈している過激な一面もありますが、それはともかく価値観の多様化の名のもと、行き過ぎた平等・自由主義に警鐘を鳴らしています。同党が目指しているものは

日本の誇りを取り戻し、自信をもって世界と共存していく

ことのように思います。日本の若者に自分の国に誇りを持てるかと問えば先進国の中で最下位になる。そのことが原因かわかりませんが、若者の自殺が多い国と言われます。つまり、生きていく目的が希薄になっていることと無縁ではないのかもしれません。

誰に向けて訴えるのか

次は誰に?という段階です。つまりターゲットですね。ここでも同党は明確なキャッチフレーズを掲げています。

投票したい政党がないので自分たちでつくりました

と。これは現代をしっかり分析したうえでのキャッチフレーズです。最近の選挙の傾向を見ていると与党もパッとしない、野党は反対ばっかりで心許ない。だから仕方なく与党に一票を投じている・・・。という消極的支持が圧倒的に多い状況です。

日本の議会選挙における投票率は世界139位という結果があるほどです。(IDEA GLOBAL NOTEより)

まさにここをうまくついていますね。社会の得も言われぬ不満をうまく吸い上げる、マグマのようにたまったエネルギーを呼び覚ませさせる名キャッチコピーです。

では、すばらしいキャッチコピーをつくったら勝手に人は集まってくれるのか?と言えばそういうことはまったくありません。これを具体化するさまざまな戦術が必要になってきます。そこで獲った作戦が

特定の支持政党がない無党派層と無関心層

をターゲットに据えたことです。無関心層も根っから無関心なのではなく、明確な争点や対立軸が示されなかったことで無関心になっているのです。自分事と捉えられていないのです。ここに焦点を当て、とても平易な主張を展開しています。

しかし、残念ながら若い世代の投票率があまりにも低い。高齢者世代の半分以下です。ここを掘り起こさなければ明日の未来はない!という信念の元、同党は展開を図ってきたように思います。

政治に参画している実感

目的を明確にし、ターゲットの選定をしたのち次にやるべきことは党員に、国民にどのようなメリットを与えるか?です。モノやカネではありません。

価値の提供

です。普通ならここでどの政党も「福祉の充実、健康、教育、産業の活性化、インフラの整備、税金の公平性、環境問題への対応、地方創生、安全保障」などそれこそ美辞麗句を並べがちです。しかし、同党は3つの重点目標しか掲げていません。

教育

食の安全と健康

国まもり

の3つです。後は参加してくれた党員と協議して今後決めていくとしています。そうです。これが党員のメリットです。見方によっては選挙前に「国民との約束」を明確に示さないのですから役割放棄しているようにも見えます。

しかし、今まで政党が選挙前に約束したことがどう達成されたか、目に見えないという現実があります。そこで政治に参画している実感のなかった国民に、自分も社会を作っていくひとりであるという実感、便益(ベネフィット)を提供しているのです。

演説力で人を動かす

さて、ここまでWhy(目的)、Who(対象)、What(提供する価値)と進んできましたが、最後はその人たちに最も効率よく伝える方法、つまりHowになります。ここが甘いと物事は実現しないのですね。私自身、これでずいぶん泣かされてきました。その中身を見ていきましょう。

まず、創設者である神●氏の街頭における演説についてです。彼の演説を動画で見ましたが、見るものを惹きつける強烈なカリスマ性があります。確かに声は大きく、情熱を込めて語るという点から心を揺さぶられる側面はあります。しかし、私がもっとも着目したのは

話す順番

です。どんなにいい話、題材も順番がめちゃくちゃでは人の心を動かすことはできません。セオリーがあるのです。そのセオリーとは、

人が知らされていない悲惨な現状

その現状が起こっている本当の原因

その結果、あなたにはどのような影響があるか

解決する手段…政治に参加すること

我が党の目指す方向性の提示

というものです。この流れを通って、最後は一緒にやりましょうと訴えかけるのです。私は率直に言ってこの演説に何度も涙しました。これまでややもすると忘れかけていた魂を覚醒させるというか、自らを律することの大切さに気付かされました。それもこれも

話の順番次第でだんだん自らの感情が高まっていくのです。さらに、この流れの中で最も大事なことは

質問

です。神●氏は演説の中で頻繁に「この現実を知っていますか」「なぜこうなったとおもいますか」という質問をガンガン投げかけます。そしてまた、会場から質問を受け付け、その場で回答しています。まさに、双方向。これこそが政治に参加するというベネフィットを与えていることに他なりません。だから、聴衆が集まるのです。

首都圏では1,000人を超える聴衆が集まると言います。一介の無名な政治家の演説にこれだけの人が集まるというのは、その類いまれなスピーチ力にあります。これは私たち経営者にも必要なことです。私は講演などの際、決して流ちょうである必要はありません。伝える順番さえ間違わなければ必ず伝わりますよ!と述べています。

この街頭演説とネット、SNSの活用という戦略。まさに現代の申し子のようなやり方に時代の変化を感じます。きっとこれから新しい形の政治が生まれるような気がしています。果たして、どのような旋風を巻き起こすか、また、私のマーケティング見立てが当たるのか注目したいと思います。

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