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第67話:弱みを強みに変える発想法

先日、ロータリーの友8月号にとてもユニークな記事があったのでご紹介します。ちなみに私は鹿児島大学の教官と一般経営者とで構成される鹿児島大学アカデミーロータリークラブの一員です。コロナ禍にあってなかなか思うにまかせない会運営が続いていますが、捉えようによっては将来の可能性につながる会だと思っています。

今回目に留まった記事は新潟県の「えちごトキめき鉄道」社長の鳥塚亮氏の取材記事です。この社名もなかなかナイスな(これまた古い表現?)ネーミングです。この社長は以前テレビ番組でも拝見したことがあり、注目している経営者の一人です。

以前の勤務先が千葉県のいすみ鉄道というローカル線の社長を2018年まで務めていた方で、その時以来気になっていました。

今回は、主に千葉で実践して来られたユニークな取り組みを、広報・マーケティングの視点からひも解いてみたいと思います。

画像はいすみ鉄道さんのホームページからお借りしています。同社のホームページは
https://isumirail.co.jp/

足元の価値を捉え直す

現在第三セクターとして運営されているいすみ鉄道ですが、もともとは国鉄の赤字ローカル線。こう聞けば国鉄時代を知る私たちシニア世代は「赤字の垂れ流し」「地域のお荷物」みたいにネガティブに捉えがちです。しかし、現代の若者は「乗ってみたい!」という反応を示すのだそうです。意外ですね。我々にとっては「古い!」が若者にとっては「新しい!」になる。視点を変えてみることの大事さに気づかされます。

まだまだ経営的には厳しい面はあるでしょうが、しかし、観光鉄道として異彩を放っています。

この社長は就任当時、「地域住民の乗車率をアップして維持しよう」とは考えなかったそうです。過疎の地ですからどんなに一生懸命頑張って乗車してくれても収入はさほど増えないという要素があります。

そこで掲げた目標が

“観光鉄道”

でした。でも、全長わずか26キロメートルしかないこの鉄道沿線に人々を惹きつけるような観光地があったか?というと、答えはNOです。それなのに全国からお客がやってくる。果たしてどんな手段を用いたのでしょうか?

地域とコラボ

まず手掛けたのは住民を巻き込むこと。地元住民をはじめ、地域唯一の高校生が駅舎の掃除を当番制にして実行してくれるなど「私たちの鉄道」という意識が定着していきました。

さらに、中学生による職場体験として乗務員の仕事、例えば車内アナウンスなどを体験してもらいました。さらに花壇の手入れや、沿線に植えられた菜の花の管理も住民の仕事です。地元の応援団である地域住民はおそろいの黄色のポロシャツでお出迎えし、いろんな作業を率先してやっていったのです。

でも、これを単なる農作業と捉えれば住民もやる気は起きなかったでしょう。でも、鉄道を残す、高校生の足となることに加えて外部からの観光客を呼び込むことをやったことで、がぜんやる気がみなぎってきたのです。

こうした改革は、いきなり全面展開は難しいでしょう。だからこそ、まずは学生を巻き込んでやがて地域住民へと広げていった。これが実を結んだのです。広報の妙味は「地域住民」を巻き込むことにあります。これにメディアが飛びつくのです。

テーミングしてみる

同社は限られたエリアの鉄道会社ですからこれといった特徴がない。そこで着目したのが

「昭和」

という時代の演出でした。昭和と言えば蒸気機関車ですが、これを走らせるには莫大な経費が掛かります。そこで、オールドファンにもなじみのアニメキャラクターのシールを施した列車を走らせました。これがSNS投稿で盛り上がったのです。現代を反映していますね。

次に鉄道マニアなら泣いて喜びそうなスクラップ前の懐かしい車両をタダ同然で入手して展示。これだけで絵になります。マニアは写真に撮ってSNSでガンガン発信する。「昭和の国鉄」という名残りで人を動かせるのです。

これに反応したのが「旧車マニア」の人たち。昭和41年製の三輪自動車(私もよく覚えてます。)や、ボンネットバス、スクーターのバイクなどが持ち込まれるようになりました。この人たちの横のつながりって強いんですね。

これに気を良くした同社は昭和なフォークソング列車、ジャズ列車、列車の中での結婚式など新しい企画を次々に編み出していきました。これがやがて鉄道運賃収入アップへとつながっていくのです。

あと、メディアとの関係づくりにも余念がありませんでした。地域の人たちにとってもっともインパクトがあるのはテレビです。そこで、ローカル線をテーマとしたテレビドラマも制作されました。これには住民も大喜び。だってドラマの中に地域の酒蔵や飲食店、直売所などなじみのところが登場するのですから・・・

このように

「廃れている」

という印象を

「昔懐かしいまたは新しい」

に変えていったのです。昭和という一つのテーマでくくるだけでムーブメントを起こせるのですね。

あと、これは私の妄想ですが、昭和の時代の農家でよく使われていた脱穀機や、囲炉裏の上で使われていたい自在鉤(じざいかぎ)、あるいは炊飯器などのオールドな家電を待合室に展示して昭和ギャラリーとしてもいいかもです。

逆張りとネーミングの妙味

あと、同氏が取った作戦が自虐ネタの利用です。ある観光客が口にした「この駅、何にもねえじゃないか!」のひと言。これに火が点いたのです。そこで生まれたポスターが

“「何もない」がある”

という逆張りのポスター。これってある意味客層の絞り込みですね。「良さがわかるほんの一握りの人だけが来てくれればいい」というターゲッティングです。

ハートをわしづかみするようなポスターでバズるのです。人はありきたりの言葉には反応しません。こうした様々な施策を土台に現在ではノスタルジック車両を活用した列車レストランも走らせています。列車レストランのまさに元祖というべきものです。このような仕掛けにメディアが殺到し、海外にも波及しています。

現在、同氏は新潟で日本酒列車や、便利、スピード時代を逆手に取った夜行列車の運行を始めています。さらに、線路の石を缶詰にして他の鉄道会社とのコラボ3点セットを1,650円で販売するなど様々な取り組みが始まっています。

こちらの画像は、えちごトキめき鉄道社のホームページからお借りしています。同社のサイトは
https://www.echigo-tokimeki.co.jp/

以上のような取り組みを見るにつけ、自分自身にフタをせず発想を広げていく。決して限界はないのだ、ということを痛切に感じさせられました。

そこで今回の結論。広報・マーケティングで劇的に顧客の評価を変えるには、

弱みを弱みのままにせず、お客の掛けているメガネを変えさせる

ことにあります。弱みはそのままだったら弱みでしかないのですが、顧客の価値観をずらすことで強みに変化することを痛感させられた今回の事例、参考にしていただければ幸いです。

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