通り魔、虐待、ストーカーなど凶悪な事件がニュースで流れない日はありません。実質、データ的にどうなのかはわかりませんので、あくまでも推測の域を出ないことを承知で今日のコラムを書いています。
現代では、SNSに代表されるネットメディアの普及により誰でも広く、深くこうした犯罪情報に接することができます。毎日こうした情報に遭遇するたびに日本はどうなってしまうのだろうと危惧される方も多いと思います。ただ、こうした事件は特異性があるからこそニュースになるのであって、残りの99.9%は「事件が起きていない!」ことの裏返しでもあります。
ニュースを見て凶悪事件に手を染めた人物は幼少期・少年時代にどのような生活を送っていたのだろうか?といつも考えさせられます。どこか共通点はないか…と。ある論文には①家庭内暴力 ②育児放棄 ③自己肯定感の欠如 ④親の不仲 ⑤性的ストレスなどが挙げられていました。
このコラムではその原因を深く掘り下げることをテーマとはしていないので詳細は避けますが、いずれにしても幼少期の家庭環境が大きく影響していることに異論を挟む人は少ないでしょう。
人間は同じ動物の中でも周囲の環境の影響を最も受けやすい生き物です。私の幼少時代のことについて触れます。我が家には常にそばに“ラジオ”という存在がありました。貧乏だったこともあり我が家にテレビが登場したのは私が中学生になってからで集落では最後でした。
父親は歌謡曲、落語、漫才、浪曲、講談などが好きで、私は幼い頃からよくそうした番組を聞かされたものです。父はやや気弱な人ではありましたが、常に明るい人で周りを笑わせることに生きがいを感じているような人でした。でもこの幼少期の体験が結果として私の人格形成に大きく影響しました。
本好きになったこと、歌が得意になったこと、人を愉快にすること、すべてがそうです。しかも、両親ともに体罰的なことを与えることもなくおだやかな家庭だったためお蔭さまですっかり「のんびり」した私が出来上がりました。(笑)
私は常に声高に言っています。人間性の構築の原点は
にあると。もちろん、学校や地域社会でも子どもを育てる環境はあるのでしょうが、何と言っても九分九厘家庭にあると私は断言します。
さて、本題です。子どもの人格形成をゆがめてしまう家庭環境と文化に因果関係はないか?ということです。殺伐とした家庭環境においては恐らく文化どころではないというのが本当のところではないでしょうか。
親子仲良くして美術館に出掛ける、コンサートに行く、映画を見る、本の読み聞かせをする…。こうした体験が極端に少ないのが実情でしょう。
もちろん、幼少期の悲惨な体験が全て悪の道に走るか?と言うとそうではありませんが、それでも敢えて文化は人格形成に大きな影響を与えると信じます。
「文化」と聞くと、美術、音楽、舞踊というように何かしら高貴なものという感覚を抱かれる方が多いかもしれません。それは日々暮らしの中で「文化」が語られる機会が少ないことが要因です。「文化」とは何もお金をかけるものではありません。毎日の生活の身近なところにあります。地域の祭りや、友だちとトンボを追っかけることも文化です。そのほか、「食文化」「服飾文化」「スポーツ文化」etc. まさに生活に密着したところにあります。
その文化の一翼を担う「マンガ文化」に私たちは着目しました。私が今伝えていることは「マンガ入り口論」です。例えば、文化的素養を子どもに付けさせたいとして美術館に行ったとします。しかし、子どもたちはその絵の良さが分かりません。ですからすぐに飽きてしまってふざける、走り回るなどしてしまうのです。するとどうなるか?大人に叱られるのです。この体験によって文化とは「静かに見るもの」と刷り込まれ敷居を高く感じてしまいます。
文化はもっと身近にあっていい。例えば科学を扱った本があるとします。しかし、あまりに文字だけで難しそう…そう感じただけで子どもは読んでくれません。そこでまずマンガ版、すると興味が湧いてきます。皆さんにも三国志などのマンガを読んで歴史通になった…みたいな経験がありませんか?
その昔、「マンガを読むと馬鹿になる」
と言われ母親や学識者から大いに批判された時期がありました。これは
「マンガを読むと子どもが勉強しなくなる」
が真実ではなかったかと思います。子どもがあまりにマンガに夢中になるので勉強をする時間が無くなるのです。ではなぜ子どもは夢中になるのか…。それは「おもしろい」からです。途中でやめようにもやめられないおもしろさが子どもにそういう行動を起こさせるのです。
この「マンガ」、ビジネスの世界ととても相性がいいようです。なぜか?マーケティングの流れ、導入部分に適しているからです。注目させる→興味を抱かせる→欲求を起こさせる→記憶させる→行動を起こさせるというセオリーの中の「注目」と「興味」という部分です。まず、ここで惹き付けないことには人は先に進んでくれません。
さて、文化とは家庭や社会全体だけにあるのではなく、企業にこそ文化の価値観を取り入れる必要があります。理由は、音楽や美術やその他もろもろの文化に接することによって感性が磨かれてくるからです。
「何を美しいと感じるのか」、「人の心はどういう場面で動くのか」など人情の機微を研ぎ澄ますことにつながります。それが結果として斬新なアイデアやコミュニケーション能力向上を生むのです。
しかし、何も難しい文化に接する必要はありません。社会貢献活動として文化団体に協賛する、芸術家を支援する、あるいは地域の祭りに社員総出でお手伝いする、本を学校に寄付するなども立派な文化活動です。
企業文化とは、「その企業独自の価値観や行動規範のことを指し、外部からその企業を見た時のイメージに直接結びつくもの」とあります。経営理念だけでなく、日頃の社員の挨拶や電話応対、仕事に取り組む姿勢など一つひとつが企業文化を形成していきます。
皆さんの企業ではいま地域と何らかの関りを持つ企業文化の構築に取り組んでおられるでしょうか?社員にその大切さを伝えておられるでしょうか?
マンガプロジェクト鹿児島では、皆様の文化活動の形成を全力で応援します。
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