世の中にはそれこそいい商品やいいサービスがあるのに売れていないケースが山ほどあります。味、製法、歴史、作り手すべてが魅力的であるにもかかわらず知られていないのです。実はこれ、知られていないのではなく、
がほとんどです。「いや、ちゃんと伝えている」と反論される方もありますが、それは自らの視点でそう思っておられるだけで、傍目から見るとキチンと伝えていないのです。「伝えているつもり」と「伝わっていない…」のギャップ。どうやって埋めていけばいいのでしょう。
以前、こんな面白いエピソードを聞いたことがあります。こだわりの飲食店で私の知人が店主に「ちょっとこの味付け濃いのでは?盛り付けが雑では?」とクレームをつけたのです。すると店主、「俺は料理のプロなんだ。素人から文句言われる筋合いはない!」と怒ったのです。これに対して知人は
「あなたは料理を作るプロだけど、私は料理を食べるプロ。あなたよりずっと多くの店を食べ歩いてるんだ」
と逆襲しました。これには、さすがの店主も閉口…。これ、いかに我われが自分の方向から物事を考えているか、の現れだと思います。では、どうしてこういった一種のギャップが起こってしまうのでしょう。
特に職人の技が表に出る職種の場合、作り手はその過程や材料、製法などにこだわりがあるためそれを伝えようとします。そのため、いきなり自分の視点から特徴を伝えようとするのです。「ちゃんと伝えている!」はあくまでも自分自身の視点で捉えたものに限っているのです。
難しいことではありますが、顧客の視点、顧客が興味を持つことに焦点を合わせなければなりません。「なぜ、その商品は私に必要なのか?」「私にどんなステキな暮らしを届けてくれるのか?」に照準を合わせます。
お客の趣味、好み、生活パターンなどをある程度把握したうえで、「あなたの●●という欲求にこの商品はお役に立ちますよ!なぜなら●●という要素が含まれているから…」という論理ですね。
モノ志向の強い方々が発せられる言葉でよくあるのが「食べてもらえば良さがわかる」「使ってもらえれば素晴らしさがわかる」というものがあります。これは真実であって真実ではありません。何かが抜けています。
これは、使ったこと、食べたことのある人なら実感できるのですが一度も接していない人にはわかりません。まず、食べてもらう、使ってもらうことの方が先なのです。そういうお客を目の前に引っ張ってきて「どうぞ食べてください」「使ってみてください」を先にやらなければいけないのです。順番が違うのです。
このマーケティング活動、販促活動がどうしてもモノづくり志向が強い方にとっては苦手なようです。特に私の住む鹿児島ではその傾向が強いように感じます。なぜなら産地として優れている、豊かな台地があるという素材そのものがいいからそれに頼ってきた背景があるように思います。
では、もう少し伝える順序について深く掘り下げてみましょう。
伝える活動にも順番があります。人間は物を買う際、特に高額商品の場合、必ずと言っていい行動パターンを通ります。それがよく知られた「AIDMA」です。
A Attention(注意・認知)
I Interest(興味・関心)
D Desire(欲求)
M Memory(記憶)
A Action(行動)
この流れに沿って人は行動を起こします。目に飛び込んできた商品をいきなり買うのは高額であればあるほど可能性が低くなります。高額の育毛剤を例にとります。
オッ、なんだこの育毛剤は?しゃれたデザインだな→
どんな素材でできているのかな?売れているのかな?→
60代の俺にも効果があるらしいぞ。何だか良さそうだな→
どこのメーカーだ。かなり以前からやってる老舗か…。→
おや、サンプルを請求できるみたいだ→
まあ、だまされたと思って一度請求してみるか…
だいたいこのようなパターンを通ります。最近ではこのAIDMAが進化してActionに移る前にSearch(検索)が付加され、さらにAction後にShare(共有)という要素が加わりました。ネットの進化の影響ですね。「本当にこの商品でいいのか」を、ネットを駆使して他人の評価を調べるのです。そしてまた、買った後、自分自身が納得するために「共有」を図ろうとするわけです。
以上のように、お客の行動に合わせてこの流れを意識してそのポイントごとに有効な販促手段を講じていかなければなりません。
さて、これまで述べてきたようにマーケティング、販売活動には順序が大事です。この中でも私は「認知・注意」がまだまだ弱いと感じています。それは、あまりに情報が世の中に溢れすぎて人の注意が散漫になっているからです。いちいち情報を見ている余裕が現代人にはありません。そこで、この第一段階を突破する必要があるわけです。そこで私たちはマンガというツールを活用しています。
この第一段階を突破する手段としてマンガやデザイン、コピーライティングは欠かせない要素です。とにかくこの「認知・注意」を突破しない限り次の段階に進めません。次回、このことについて詳しくお話しします。
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